Antibubble(アンチバブル)

Comprehensive Science Research Club, Urawa-Higashi High School, Saitama, Japan


本研究の詳細は、
読売新聞社発行「第49回日本学生科学賞作品集」CD-ROM版(2006)
に収録されています。

1.はじめに

 AntibubbleBubble(シャボン玉)の逆である。Bubbleでは空気を液体の薄膜が取り囲んでおり、その外側は空気である。Antibubbleでは液体を空気の薄膜が取り囲んでおり、その外側は液体である。

2.Antibubbleをつくりその挙動を調べる

 ビーカー中に水100mLを入れ、これに台所用中性洗剤5滴を滴下し、泡立たないようにかき混ぜ一様な洗剤溶液を調製した。この洗剤溶液中にストローを2cm入れ、ストローの反対側を指で塞いで水中から引き上げ水面の上5mmに保持し、塞いだ指を離した。すると、ストロー中の洗剤溶液は液滴となってビーカー中の溶液に入り、液滴の周囲には暗い縁が形成された。

液滴はビーカー中の溶液と混ざることなく、暗い縁に囲まれたまま溶液中をしばらく下降した後、下降を止めゆっくりと上昇し水面の真下にしばらく停留した。その後、1分ほどで瞬時に崩壊し、液滴は周囲の溶液と混ざった。718分間崩壊しない場合もあった。暗い縁に囲まれた液滴(以下Antibubbleと呼ぶ)の表面には虹のような色が観察された。

表面に色が観察されたことから、Antibubbleの表面には光の干渉を生じさせる程度の薄膜が存在することが分かる。この薄膜はストローから洗剤溶液が水中に没するとき表面に付着した空気層であると思われる。空気が薄膜となって水中で比較的安定に存在していると想定できる。従って、Antibubbleが上昇した原因は次のように考えられる。Antibubble内の溶液と周囲の溶液は同じ溶液であるから比重も同じである。しかし、内液は周囲を薄い空気層で囲まれているため、空気層まで含めた部分の比重は周囲の溶液よりも小さい。このためAntibubbleは上昇したのである。Antibubbleを横から観察すると、周囲の暗い縁は鉛直上部で厚く、下部で薄く見えた。ビーカーの側面に衝突したAntibubbleは崩壊せずに跳ね返ったが、ビーカーの底に到達したAntibubbleは底に衝突した瞬間、崩壊した。この原因は、内液を囲む薄い空気層は圧力に対して不安定であると予想されるが、下部の部分が最も薄いため崩壊しやすいからだと思われる。水面直下においても、溶液内部においても、底に衝突した場合においても、崩壊した瞬間、Antibubbleの上方に小さい気泡が観察された。この原因は、空気の薄膜が厚みの薄い側で破れ、厚みの厚い側に引き込まれて気泡となったためと考えられる。Antibubble同士が横から緩やかに衝突すると、ゴムまりのように跳ね返りどちらのAntibubbleも崩壊しなかった。ビーカー側面に衝突したときでも、崩壊せずに跳ね返る場合もしばしば観察された。Antibubbleの内液は空気中に浮いていることになるが、これは内液にはたらく重力と空気による浮力が釣り合っているためである。従って、空気層の圧力は上部で小さく、下部で大きいと思われる。

Antibubbleの空気層(薄膜)が比較的安定な原因は次のように考えられる。Antibubbleが形成されたとき界面活性剤分子は空気層側に疎水性部分を、溶液側に親水性部分を向けて界面に並んでいる。何らかの原因で空気層が引き伸ばされると、界面の界面活性剤分子の濃度が低下する。その結果、引き伸ばされた部分の表面張力が増大し、伸びた空気薄膜を引き戻す。こうして空気層の厚さが一定に保たれてAntibubbleが比較的安定に存在する。

3.膜厚を測定する

Antibubble100個を崩壊させたときに発生する気泡を水上置換によってメートルグラスに捕集して、体積を測定したところ285mm3であった。Antibubbieの平均半径は6.6mmであった。この結果から膜厚を計算すると5.2μmとなった。Antibubbleはμmオーダーの空気薄膜に囲まれていることが確認でき、この空気薄膜が浮力および色の原因になっていることが分かった。

4.Antibubble崩壊の過程を調べる

 水面下に停留しているAntibubbleの上面、下面、側面をエナメル線で刺し、Antibubbleが崩壊する様子を高速度カメラ(Kodak Motion Corder Analyzer, Model SR-Ultra)で撮影した。撮影速度は1000fpsにした。

刺された部分の反対側へ気体が集まるようにして、薄膜は収縮、消滅し、大きな気泡と細かい気泡が発生した。これは薄膜よりも気泡のほうが安定であることによると考えられる。細かい気泡が多数発生した理由は、薄膜の収縮速度が速いため大きな気泡にまとまりきれなかったためだと思われる。

下面を刺した場合、上面付近に大きな気泡がひとつ発生し薄膜消滅後一時的に下降した。これは収縮の向きと浮力の向きが一致しているため気体がひとつにまとまりやすかったためだと考えられる。側面を刺した場合刺した側の反対側に薄膜は収縮して行ったが、大きな気泡はAntibubbleの上側付近に形成された。薄膜の空気が集まる過程での浮力の影響によるためと思われる。上面を刺した場合薄膜が収縮する過程で、比較的大きな気泡が10個途中で現れるとともに、細かい気泡も発生した。抵抗と浮力によってひとつの気泡になることが妨げられたためと考えられる。また、薄膜消滅までにかかる時間が最も長いことも同様の理由だと思われる。以上により、薄膜が収縮する方向によって、気泡の出来方に違いがあることが分かった。エナメル線を刺した瞬間から空気の薄膜が完全に消滅するまでの時間は、0.026秒(上面刺)、0.016秒(下面刺)、0.016秒(側面刺)であった。

5.いったん沈んで停留した後浮き上がるAntibubbleをつくる

ゆっくりと気体を発生する溶液を内液に混ぜれば、いったん沈んで停留したAntibubbleが浮き上がると想定される。そこで、臭素酸ナトリウム、臭化ナトリウム、マロン酸、硫酸、フェロインを含む水溶液100mLを調製し、洗剤4滴を滴下して内液をつくった。これをストローに含ませ、洗剤を滴下した水中に落としAntibubbleをつくった。Antibubbleが水底まで沈み、その位置に1分間程度停留した後崩壊したり。洗剤溶液の中程にしばらく停留した後、ゆっくりと上昇し始め、水面に到達する前に崩壊したりした。

Antibubbleが沈んだまま停留した理由は、内液には臭素酸ナトリウムなどの物質が溶けているため、比重が大きいことだと思われる。停留した後、ゆっくりと上昇した理由は、内液中で二酸化炭素がゆっくり発生していることだと考えられる。この二酸化炭素がAntibubbleの薄膜中に入り薄膜の体積が増加し、Antibubbleの比重が外液の比重より小さくなり上昇した。上昇途中で崩壊したのは、気体の量がある値を超えたため薄膜が不安定となったためと考えられる。

6.ロザリオ状に連なって出来るAntibubbleをつくる

洗ビンのノズル部分を内径3mmになるようにハサミで切り、洗剤溶液を調製した洗剤溶液をビーカーと洗びんに入れた。銅線をノズル部分に数回巻き、その一端をビーカー中の溶液に浸した状態で、ノズルを水面に近づけ洗ビン中の溶液を流し出した。すると、連続流がくびれて複数のAntibubbleが形成された。

この実験をやっているときに、水面上に溶液が乗る現象が観察された。水面上にドーム状のシャボン玉はできるが、ドーム状のAntibubbleはできないとされている。しかし私たちの観察結果によれば、実験条件を工夫することでドーム状のAntibubble (以後Antidomeとよぶ)がつくれると考え、次の実験をおこなった。

7.Antidome形成を試みる

ストローから洗剤溶液を落とす際、水面上に置くように緩やかに落とすと、再現性よく水面上にレンズ状のAntidomeが2秒間形成された。これは、水面上に置いた液滴が液滴下面に付着した空気層に乗ったためであると思われる。

Antidomeが形成されると同時に、洗剤溶液をストローで不規則に揺さぶるとAntidomeが長時間崩壊しないことを発見した。

すなわち溶液を不規則に揺さぶると、本来不安定であり2秒で崩壊していたAntidomeが数分間以上存在できることを発見したのである。Antibubbleに対しても、溶液の揺さぶりをかけてみたところゆらゆら動くAntibubbleがなかなか崩壊しなかった。空気薄膜がゆらぎや衝撃に対して不安定だと思っていたが、揺さぶりや加振によって逆に安定性が増す可能性があるのではないかと思われる。

8.まとめ

本研究の主な成果は次の4点である。

(1)Antibubbleを確実に作れるようになった。銅線による短絡でロザリオ状のAntibubbleや大きなAntibubbleも作れるようになった。(2)空気薄膜の厚さを測定して、浮く原理や色の原因をつきとめた。(3)高速度カメラでAntibubble崩壊の過程を撮影し、その特徴を明らかにした。(4)Antibubbleの浮き沈みをコントロールする方法を開発した。(5)Antidome (アンチドーム)の存在を発見し、作ることに成功した。溶液の揺さぶりによってAntidomeが数分間崩壊しないことを見出した。

よくある質問にお答えします。

1.洗剤はチャーミーでなくてはいけませんか→どの洗剤でも大丈夫です。
2.水は蒸留水や精製水でなくてはいけませんか→水道水で大丈夫です。
3.ストローの太さは→ふつうに使っている太さのもので出来ます。
4.膜厚はどうやって測定したのですか→気泡を水上置換して測定しました。

Experimental Investigations on
The Formation, Collapse and Behavior of
Antibubbles

**************Under Construction****************************

1. Introduction: What is an antibubble?

 An antibubble is the opposite of a bubble. A bubble is a spherical film of liquid surrounding an air pocket. An antibubble is a spherical shell surrounding a liquid (Figure A). That is, a thin film of air can enclose a liquid globule in a surrounding liquid. The liquids forming the globule and the surrounding liquid are the same.

2. Experiment 1: How do we make an antibubble?

[Preparations]

City water, Detergent, Straw, Beaker

[Methods]

(1)  We put city water of 100mL within a beaker, and added five drops of detergent to the city water. And we gave stirs to the liquid in the beaker with a straw not to bubble.

(2)  We stuck a straw into the liquid in the depth of 2cm from the surface, and blocked up the other side of a straw with a finger.

(3)  We took out the straw from the liquid, held it to 5mm over the surface of the liquid, and separated the finger that blocked up the other side (Figure 1).

[Results]

(1)  By the method (3), the detergent solution in a straw became a globule in the liquid in a beaker (Figure 2,3).

(2)   In pictures (e.g. Figure 2,3), a globule seems to have a thick black border. A globule with a block border went down slowly without a globule being mixed with the liquid in a beaker. A globule stopped soon and rose slowly to stay for a while beneath the surface of the liquid in a beaker (Figure4). In approximately 1 minute, a globule collapsed, and subsequently the liquid of a globule mixed with the liquid in a beaker. In some cases, such a globule did not collapsed for 7-8 minutes. We call such a globule mentioned above “antibubble”.

(3)   Colors such as a rainbow were observed on the surface of an antibubble (Figure 5).

(4)   When we observed an antbubble from the side, the black border was seen thin at the lower part and thick at the upper part.

(5)   An antibubble that collided with the side of a beaker bounced without collapsing, but an antibubble that arrived at a bottom of a beaker collapsed the moment it collided with a bottom.

(6)   When an antibubble collapsed at a bottom of a beaker, and when an antibubble collapsed beneath the surface of the liquid in a beaker or in the internal parts of the liquid, small bubbles of air were observed the moment an antibubble collapsed.

(7)   When an antibubble collided with each other from the side gently, it bounced like a rubber boll without collapsing. It was often observed that an antibubble bounced without collapsing even if it collided with the side of a beaker.

[Considerations]

(1)   Because colors were observed on the surface of an antibubble, it is assumed that there is a thin firm to let interference of light occurs. It seems that this film is the atmospheric layer that stuck to the surface of a droplet from a straw.

(2)   S

3. Experiment 2: We measure a thickness of air-film.

[Preparations]

[Methods]

[Results]

[Considerations]

4. Experiment 3: Research into processes of collapse

[Preparations]

[Methods]

[Results]

[Considerations]

5. Experiment 4: We make an antibubble that does not rise.

[Preparations]

[Methods]

[Results]

[Considerations]

6. Experiment 5: We make an antibubble that rise after sinking for some time.

[Preparations]

[Methods]

[Results]

[Considerations]

7. Experiment 6: Research into the influence of ultrasonic waves

[Preparations]

[Methods]

[Results]

[Considerations]

8. Experiment 7: We make a rosary of antibubbles.

[Preparations]

[Methods]

[Results]

[Considerations]

9. Experiment 8: We make an antidome, which is the opposite of a dome.

[Preparations]

[Methods]

[Results]

[Considerations]