アボガドロ数・原子量・分子量
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基礎
1. 次の表はいろいろな原子1個の質量を示したものである。
水素原子(H) 0.000000000000000000000001674g
炭素原子(C) 0.000000000000000000000019950g
窒素原子(N) 0.000000000000000000000023272g
酸素原子(O) 0.000000000000000000000026578g
ナトリウム原子(Na) 0.000000000000000000000038189g
(問1)炭素原子を602000000000000000000000個集めて質量を測ると何gになるか。
(問2)ナトリウム原子をアボガドロ定数個集めて質量を測ると何gになるか。
(問3)水の分子式はH2Oである。つまり、水素原子2個と酸素原子1個からできている。水分子1個の質量は何gか。
(問4)水分子6.02×1023個集めて質量を測ると何gになるか。
2. 次の文中に数値を入れよ。なお、教科書の周期表を参照せよ。
(ア)ナトリウム原子602000000000000000000000個の質量は( )gである。
(イ)6.02×1023個のことを( )molという。従ってナトリウム1molの質量は( )gである。
(ウ)炭素の原子量は( )であるから、炭素1molの質量は( )gである。
(エ)炭素6.005gを測りとると、炭素原子( )個を集めたことになる。
3. 上皿天秤の左側に炭素原子201000000000000000000000個をのせ、
右側にナトリウム原子120400000000000000000000個をのせた。
このとき上皿天秤のつりあいはどうなるか。次から選べ。
(あ)左側に傾く。
(い)右側に傾く。
(う)つり合う。
(え)その他
(理由)
4. 1円玉はアルミニウムでできている。つまり、アルミニウム原子の集まりである。ところで1円玉の質量は1gである。では、1円玉1個は何個のアルミニウム原子が集まってできているのか。
[例題1]次の各数値を大きい順に並べよ
(ア)9.0gの水の中の水素原子の数
(イ)9.0gのアルミニウムの中のアルミニウム原子の数
(ウ)58.5gの塩化ナトリウムNaClの中のイオンの数
(エ)0℃,1atmで8.4gのメタンCH4中の水素原子の数
〈答〉「メタン、塩化ナトリウム、水、アルミニウム」の順です。
〈考え方〉
原子量は H=1、O=16、Al=27、Cl=35.5、C=12
アボガドロ数は 6×1023
を使います。
モル数×アボガドロ数×分子中の数
を計算すれば題意の数が求まります。
9gの水の中の水素原子の数=(9/18)×(6×1023)×2
=1×(6×1023)
9gのアルミニウムの中のアルミニウム原子の数
=(9/27)×(6×1023)×1
=0.33×(6×1023)
58.8gの塩化ナトリウムNaClの中のイオンの数
=(58.5/58.5)×(6×1023)×2
=2×(6×1023)
0℃、1atmで8.4gのメタンCH4中の水素原子の数
=(8.4/16)×(6×1023)×4
=2.1×(6×1023)
これらを比べると答えになります。
なお、式中の割り算は
モル数=質量/分子量
の意味です。
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[例題2]1.一酸化炭素 2.アンモニア 3.酸素 4.プロパンC3H8
の中で標準状態でもっとも密度の大きいものはどれか。
〈答〉プロパン
〈考え方〉
1811年、アボガドロは「気体の構成単位はいくつかの原子が結合した分子で、同温・同圧で同体積の気体は、気体の種類に関係なく、同じ数の分子を含む」という説を提唱。《三省堂「化学TB」より》
さて、問題を解いてみましょう。
まず、密度を求めるためには質量と体積が必要です。なぜなら、
密度=質量/体積
ですから。
アボガドロの法則
「同温・同圧で同体積の気体は、気体の種類に関係なく、同じ数の分子を含む」
に数値を入れてたどって行きましょう。
『0℃・1atmで22.4リットルの気体は、気体の種類に関係なく、6×1023個の分子を含む』
となります。
0℃・1atmで22.4リットルの状態の気体なら、どんな気体でも中身は6×1023個つまり1molなのです。
ところで、1molの質量は?・・・・分子量にgをつければ出ますね。
1.一酸化炭素CO=28ですから、1molは28g
2.アンモニアNH3=17ですから、1molは17g
3.酸素O2=32ですから、1molは32g
4.プロパンC3H8=44ですから、1molは44g
ここで密度の式に戻ります。
密度=質量/体積
を使って次の割り算をすればよいのです。
1.一酸化炭素 28/22.4
2.アンモニア 17/22.4
3.酸素 32/22.4
4.プロパン 44/22.4
もっとも密度の大きいものはどれか?・・・・という問ですから、割り算をやらなくとも答えは「プロパン」だと分かります。
〈おまけ〉
空気の平均分子量は28.8です。プロパンの分子量が44ですから、密度は空気よりプロパンの方が大きいのです。つまり、空気よりプロパンの方が重いのです。だから、プロパンのガス漏れ探知機は足下に設置してあります。
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[例題3]
銅の結晶は面心立方格子をとり、その単位格子の一辺の長さは3.60×10−8
cmとする。また、銅の密度は8.96g/cm3 、アボガドロ定数は6.02×1023
個/molとする。
(1)銅原子一個の質量はいくらか?
(2)銅の原子量を求めよ。
(3)銅の結晶が単位格子の一辺の長さ3.60×10−8のままで体心立方格子とるとすると銅の密度は何g/cm3か。
〈答〉(1)1.045×10-22g (2)62.9 (3)4.48g/cm3
まず、確認事項です。
面心立方格子では、単位格子の中に4個の原子がある。
体心立方格子では、単位格子の中に2個の原子がある。
密度=質量/体積
以上を使います。
〈考え方〉
(1)銅原子一個の質量はいくらか?
銅原子1個の質量をmとして、単位格子に密度の式を当てはめます(単位に注意しながら)。
質量=4×m
体積=単位格子(立方体)の体積=(3.60×10-8)3
密度=8.96
よって、
8.96=4×m/(3.60×10-8)3
これを解いて
m=(8.96/4)×(3.60×10-8)3=1.045×10-22
[答]1.045×10-22g
(2)銅の原子量を求めよ。
原子量は原子を6.02×1023個集めたときの質量(g)の数値に相当します。
従って、
6.02×1023個集めたときの質量=(1.045×10-22)×6.02×1023=62.9 〔g〕
[答]62.9
(3)銅の結晶が単位格子の一辺の長さ3.60×10−8のままで体心立方格子をとるとすると銅の密度は何g/cm3か
面心立方格子であれ、体心立方格子であれ、銅原子1個の質量は変わりません。従って、1の答1.045×10-22gは使えます。体心立方格子では、単位格子の中に2個の原子がありましたから、密度の式に
質量=2×1.045×10-22
体積=単位格子(立方体)の体積=(3.60×10-8)3
を当てはめます。
密度=質量/体積
=2×1.045×10-22/(3.60×10-8)3
=(2×1.045/3.6)×10(-22+34)=4.480
[答]4.48g/cm3
〈おまけ〉
文献を調べました。
岩波「理化学辞典」第5版では8.96g/cm3(20℃)
丸善「理科年表」1991年版では8.93g/cm3 (温度指定なし)
でした。
原子間の距離、つまり単位格子の長さはエックス線を使った実験で測定できます。密度も簡単な実験で測定できます。実験の結果が辞典には書いてあります。
実験の結果と上の問題の数値を比べると、銅の結晶は面心立方格子なのだと分かります。