ブロメートオシレータ
 
[ 目次 ]
フェノール
アニリン
ピロガロール
没食子酸
フロログリシノール
スルファニル酸
実験結果一覧
DISCUSSION
 
化学振動を示す反応は、BZ反応以外にもブリッグスーラウシャー反応やミニマルオシレータがあり、その挙動について研究が進められている。
 これらに対して、報告数は少ないが、金属触媒が存在しなくとも化学振動が出現する反応系が報告されている。その一つは、硫酸酸性下において臭素酸で芳香族化合物を酸化するブロメートオシレータ(Aromatic-Bromate-Acid系)である。ここでは芳香族化合物としてフェノール、アニリン、ピロガロール、没食子酸、フロログリシノール、スルファニル酸を選び、条件を変えながら数回にわたって試みた実験の結果を報告する。
 
《実験1》
フェノール−臭素酸カリウム−硫酸系(その1)
[実験条件]
反応基質 フェノール
酸化剤 臭素酸カリウム
媒質 硫酸
反応液の温度 29.1℃
測定時間間隔 3.33秒
[実験手順]
 ビーカーに純水944.5mLをとり、これに濃硫酸55.5mLを溶かして希硫酸とした後、アニリン0.3gを加える。これをA液とする。A液の硫酸濃度は1.00Mフェノール濃度は0.0033Mである。
 このA液をビーカーに200mLとり、自動かき混ぜる機で撹拌しながら臭素酸カリウム(式量167)0.8gを加え、溶液の酸化還元電位をウチダ酸化還元電位計142ー1250ORPを用いて3.33秒毎に測定した。反応開始時点での臭素酸カリウム濃度は0.024Mである。
[実験結果]
 溶液の酸化還元電位の経時変化は図1のとおりであった。
 酸化還元は667mVからスタートし、平均0.918mV/secの割合で上昇し921mVまで達し、その後160秒ほどの間平均924mVの一定値に留まった。
 そしておよそ443秒後から振動状態が出現した。振動回数は6回、平均振幅は254mV(最大振幅270mV、最小振幅233mV)、平均周期は97.23秒(最大周期110.09秒、最小周期83.34秒)であった。
 1763秒後以降は1076mVの一定値となった。
 溶液は始め無色であったが、反応の進行に伴って黄色を呈していった。
《実験2》
フェノール−臭素酸カリウム−硫酸系(その2)
[実験条件]
反応基質 フェノール
酸化剤 臭素酸カリウム
媒質 硫酸
反応液の温度 33.5℃
[実験手順]
 純水194.3mLに濃硫酸6.0mLを溶かした溶液に、フェノール0.1gを溶かしてA液とした。A液の硫酸濃度は0.54M、フェノール濃度は0.0053Mである。
 別の純水97.0mLに濃硫酸3.0mLを溶かした溶液に、臭素酸カリウム(式量167)0.8gを溶かしてB液とした。B液の硫酸濃度は0.54M、臭素酸カリウム濃度は0.048Mである。
 次にA液100mLをビーカーにとり、撹拌しながらB液全部を加え、酸化還元電位を3.3秒毎に測定した。混合直後の硫酸濃度は0.54M、フェノール濃度は0.0035M、臭素酸カリウム濃度は0.016Mである。
[実験結果]
 溶液の酸化還元電位の経時変化は図のとおりであった。このグラフからは化学振動の出現は認められない。
 
 
 
 
 
 
 
 
《実験3》
アニリン−臭素酸カリウム−硫酸系
[実験条件]
反応基質 アニリン
酸化剤 臭素酸カリウム
媒質 硫酸
反応液の温度 23.0度
測定時間間隔 6.08秒
[実験手順]
 ビーカーに純水272.4mlをとり、これに濃硫酸59.1mlを溶かして希硫酸とした後、アニリン0.1gを加える。これをA液とする。
 次に別のビーカーに純水100mlを取り、これに臭素酸カリウム1.1gを溶かす。これをB液とする。
 A液153.2mlをさらに別のビーカーに取り、攪拌状態におく。この中にB液92.4mlを加えると同時に溶液の酸化還元電位を6.08秒毎に測定する。測定にはウチダ酸化還元電位計142ー1250ORPを使用した。
[実験結果]
 反応開始前の溶液は無色透明であったが、反応の進行にともない茶色味を帯びて不透明度が増していった。
 酸化還元電位の時間変化の様子は図に示したとおりである。これから、溶液の酸化還元電位が時間振動していることが判る。周期の平均値は22.29秒、振幅の平均値は20.1mV、誘導期は152秒であった。図のグラフから判るように、この化学振動は時間がたつにつれて振幅の範囲が高電位側へスライドしているという特徴をもっている。
[議論]
 この実験によって、アニリンー臭素酸ー硫酸系において化学振動が出現することが確認出来た。このABA系で進行する化学反応の機構は未だ解明されておらず、いくつかの提案があるに留まっている。BZ反応の反応機構の解明が進んでいることと対照的である。両反応には臭素酸以外のオキシアニオンでは振動を生じないこと、臭化物イオンBr-がスイッチング化学種となっていること、塩化物イオンCl- が阻害剤となること等の共通点がある。しかし、反応基質(BZは脂肪族、ABAは芳香族)、触媒の必要性(BZは有、ABAは無)等に大きな違いがあり、反応機構や化学量論関係も根本的に異なる可能性がある。
 
《実験4》
ピロガロール−臭素酸カリウム−硫酸系(その1)
[実験条件]
 
反応基質     ピロガロール(1、2、3ートリヒドロキシベンゼン)
酸化剤      臭素酸カリウム
媒質       硫酸
反応液の温度   37℃
 
[実験手順]
 
 純水91.7mLに濃硫酸8.3mLを溶かした溶液に、ピロガロール1.00gを溶かしてA液とした。A液の硫酸濃度は1.49M、ピロガロール濃度は0.0793Mである。
 純水91.7mLに濃硫酸8.3Mlを溶かした溶液に、臭素酸カリウム(式量167.0)3.3gを溶かしてB液とした。B液の硫酸濃度は1.49M、臭素酸カリウム濃度は0.198Mである。
 次に、A液を自動かき混ぜ機で攪拌しながらB液をを加え、溶液の酸化還元電位をウチダ酸化還元電位計142-1250ORPによって3.33秒毎に測定した。攪拌は続けたままである。反応開始時点での硫酸、ピロガロール、臭素酸カリウム濃度はそれぞれ1.49M、0.0397M、0.0990Mである。
 
[実験結果]
 
 溶液の酸化還元電位の経時変化は図のとおりであった。
 酸化還元電位は476mVからスタートし、平均2.60mV/sの割合で上昇し544mVまで達した後、上昇速度が0.0315mV/sの割合に減少し、103秒後には566mVになった。103秒後、振動状態が出現した。振動回数は4回、平均振幅は204mV(最大振幅281mV、最小振幅102mV)、平均周期は51.1秒(最大周期73.3秒、最小周期33.3秒)であった。333秒後以降は697mVから0.247mV/sの割合で上昇を続けた。
                              
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
《実験5》
ピロガロール−臭素酸カリウム−硫酸系(その2)
 
[実験条件]
 
反応基質     ピロガロール(1、2、3−トリヒドロキシベンゼン)
酸化剤      臭素酸カリウム
媒質       硫酸
反応液の温度   37.9℃
 
[実験手順]
 
 純水94.0mLに濃硫酸6.0mLを溶かした溶液に、ピロガロール1.0gを溶かしてA液とした。A液の硫酸濃度は1.13M、ピロガロール濃度は0.0793Mである。
 また、純水94.0mLに濃硫酸6.0mLを溶かした溶液に、臭素酸カリウム(式量167)3.3gを溶かしてB液とした。B液の硫酸濃度は1.13M、臭素酸カリウム濃度は0.198Mである。
 次に、A液を自動かき混ぜ機で攪拌しながらB液をを加え、溶液の酸化還元電位をウチダ酸化還元電位計142-1250ORPによって3.33秒毎に測定した。攪拌は続けたままである。反応開始時点での硫酸、ピロガロール、臭素酸カリウム濃度はそれぞれ1.13M、0.0397M、0.0990Mである。
 
[実験結果]
 
 溶液の酸化還元電位の経時変化は図のとおりであった。
 反応開始後66.6秒間、酸化還元電位は457mVから470mVまで平均0.195mV/sの割合で上昇した後、上昇速度を2.15mV/sに増し、89.9秒後に520mVになった。その後上昇速度は0.180mV/sに減少し、156.5秒後に532mVに到達した。
 この時点から系は63.1秒後まで不規則な振動を示した。
 263.1秒後からは609.4秒後の間、実験4(硫酸濃度1.49M)で出現した振動の波形と同様な波形が得られた。振動回数3回、平均振幅は290mV(最大振幅320mV、最小振幅271mV)、平均周期は115.4秒(最大周期16.5秒、最小周期83.3秒)であった。
 609.4秒後からは不規則な振動が再び出現した。639.4秒後の位置に730mVのピーク、835.8秒から935.7秒の間に794mVから822mVにわたる比較的「平坦」なピークが現れた。
 935.7秒後からは振動状態は出現せず、0.300mV/sの割合で酸化還元電位は上昇し、1478.5秒後には850mVに達した。
 
《実験6》
ピロガロール−臭素酸カリウム−硫酸系(その3)
 
[実験条件]
 
反応基質     ピロガロール(1、2、3−トリヒドロキシベンゼン)
酸化剤      臭素酸カリウム
媒質       硫酸
反応液の温度   32.7℃
 
[実験手順]
 
 純水96.0mLに濃硫酸4.0mLを溶かした溶液に、ピロガロール1.0gを溶かしてA液とした。A液の硫酸濃度は0.720M、ピロガロール濃度は0.0793Mである。
 また、純水96.0mLに濃硫酸4.0mLを溶かした溶液に、臭素酸カリウム(式量167)3.3gを溶かしてB液とした。B液の硫酸濃度は0.720M、臭素酸カリウム濃度は0.198Mである。
 次に、A液を自動かき混ぜ機で攪拌しながらB液を加え、溶液の酸化還元電位をウチダ酸化還元電位計142-1250ORPによって3.33秒毎に測定した。攪拌は続けたままである。反応開始時点での硫酸、ピロガロール、臭素酸カリウム濃度はそれぞれ0.720M、0.0397M、0.0990Mである。
[実験結果]
 
 溶液の酸化還元電位の経時変化は図のとおりであった。
 酸化還元電位は476mVからスタートし、次第に上昇速度を上げながら、179.8秒後に520mVに達し、その後はほぼ一定の上昇速度0.135Mv/sで上昇し、919.1秒後に620mVに達した。
 ここから振動に類似した電位変化が1回現れた。即ち、振幅105mVに相当するピーク725mVが現れ、66.6秒後には648mVまで下降し、その後83.35秒後には726mVに戻っている。しかしこれ以降は振動状態の出現は認められず、一定の上昇速度0.148mV/sで電位は上昇し1595.1秒後に810mVに到達した。                              
                              
《実験7》
没食子酸−臭素酸カリウム−硫酸系(その1)
 
[実験条件]   
 
反応基質     没食子酸
酸化剤      臭素酸カリウム
媒質       硫酸
反応の温度    39.9゜C
 
[実験手順]
 
 純水200.00mlに濃硫酸25.00mlを溶かして希硫酸をつくり、これを2分する。その一方に没食子酸一水和物1.0gを溶かしてA液とした。 もう一方に、臭素酸カリウム(式量167.0)2.8gを溶かしてB液とした。
 次に、A液を自動かき混ぜ機で攪拌しながらB液をを加え、溶液の酸化還元電位をウチダ酸化還元電位計142ー1250ORPによって3.34秒毎に測定した。攪拌は続けたままである。反応開始時点での硫酸、没食子酸、臭素酸カリウム濃度はそれぞれ2.000M、0.0236M、0.0745Mである。
[実験結果]
 
 溶液の酸化還元電位の経時変化は図のとおりであった。
 反応開始から93.52秒までの間に、酸化還元電位は568mVから1026mVまで上昇したが、この間不規則な電位変動が見られた。
 93.52秒後から721.44秒後のまでの間、周期的な電位変動(時間的化学振動)が観測された。振動回数6回、平均振幅は19.42mV(最大振幅30.0mV、最小振幅12.5mV、最大立ち上がり41mV、最小立ち上がり14mV、最大落ち込み19mV、最小落ち込み10mV)、平均周期は109.55秒(最大周期170.34秒、最小周期60.12秒)であった。
 721.44秒後からは振動状態は出現せず、0.053318021mV/sの割合で酸化還元電位は上昇し、965.26秒後には1058mVに達した。
 
《実験8》
没食子酸−臭素酸カリウム−硫酸系(その2)
 
[実験条件]
 
反応基質     没食子酸
酸化剤      臭素酸カリウム
媒質       硫酸
反応の温度    30.6゜C
 
[実験手順]
 
 純水210.00mlに濃硫酸15.00mlを溶かして希硫酸をつくり、これを2分する。その一方に没食子酸一水和物1.0gを溶かしてA液とした。 もう一方に、臭素酸カリウム(式量167.0)2.8gを溶かしてB液とした。
 次に、A液を自動かき混ぜ機で攪拌しながらB液をを加え、溶液の酸化還元電位をウチダ酸化還元電位計142ー1250ORPによって3.34秒毎に測定した。攪拌は続けたままである。反応開始時点での硫酸、没食子酸、臭素酸カリウム濃度はそれぞれ1.200M、0.0236M、0.0745Mである。
 
[実験結果]
 
 溶液の酸化還元電位の経時変化は図のとおりであった。
 反応開始から200.4秒までの間に、酸化還元電位は平均1.357285mV/sの速度で653mVから925mVまで上昇した。
 200.4秒後から644.62秒後のまでの間、周期的な電位変動(時間的化学振動)が観測された。振動回数4回、平均振幅は48.75mV(最大振幅58.5mV、最小振幅36.0mV)、平均周期は93.52秒(最大周期106.88秒、最小周期83.50秒)であった。
 644.62秒後からは不規則な電位振動が続いたが、明確な振動状態は観測出来なかった。                              
 
《実験9》
フロログリシノール−臭素酸カリウム−硫酸系(その1)
 
[実験条件]
 
反応基質     フロログリシノール
酸化剤      臭素酸カリウム
媒質       硫酸
反応の温度    32.5゜C
 
[実験手順]
 
 純水200.00mlに濃硫酸15.00mlを溶かして希硫酸をつくり、これを2分する。その一方にフロログルシノール1.0gを溶かしてA液とした。 もう一方に、臭素酸カリウム(式量167.0)2.8gを溶かしてB液とした。
 次に、A液を自動かき混ぜ機で攪拌しながらB液をを加え、溶液の酸化還元電位をウチダ酸化還元電位計142ー1250ORPによって3.34秒毎に測定した。攪拌は続けたままである。反応開始時点での硫酸、フロログルシノール、臭素酸カリウム濃度はそれぞれ1.25506M、0.28656M、0.07790Mである。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
[実験結果]
 
 溶液の酸化還元電位の経時変化は図のとおりであった。明らかな規則性は認められなかった。
                              
《実験10》
フロログリシノール−臭素酸カリウム−硫酸系(その2)
 
[実験条件]
 
反応基質     フロログリシノール
酸化剤      臭素酸カリウム
媒質       硫酸
反応の温度    42.9℃
 
[実験手順]
 
 純水200.0mlに濃硫酸25.0mlを溶かして希硫酸をつくり、これを2分する。その一方にフロログルシノール1.0gを溶かしてA液とした。 もう一方に、臭素酸カリウム(式量167.0)2.8gを溶かしてB液とした。
 次に、A液を自動かき混ぜ機で攪拌しながらB液をを加え、溶液の酸化還元電位をウチダ酸化還元電位計142-1250ORPによって3.34秒毎に測定した。攪拌は続けたままである。反応開始時点での硫酸、フロログルシノール、臭素酸カリウム濃度はそれぞれ2.00M、0.0274M、0.0744Mである。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
[実験結果]
 
 溶液の酸化還元電位の経時変化は図のとおりであった。溶液の酸化還元電位は、測定開始後86.79秒までの間に382mVから758mVまで急激に上昇したが、その後は804.46秒までの間ゆるやかな増減を繰り返しながら905mVまで上昇した。ここまでの間には明瞭な規則性は確認できなかった。
 804.46秒後から平均周期53.41秒(最大周期70.10秒、最小周期40.06秒)、平均振幅15.7mV(最大振幅19mV、最小振幅12mV)の電位振動が出現した。4回目の振動に入った時点で、生成沈殿物の粘性のためマグネティックスタラーが回転不能となり、実験は中断した。                              
《実験11》
スルファニル酸−臭素酸カリウム−硫酸系(その1)
 
[実験条件]
 
反応基質     スルファニル酸
酸化剤      臭素酸カリウム
媒質       硫酸
反応の温度    34.3゜C
 
[実験手順]
 
 純水91.7mlに濃硫酸8.3mlを溶かした溶液に、スルファニル酸0.69gを溶かしてA液とした。また、純水91.7mlに濃硫酸8.3mlを溶かした溶液に、臭素酸カリウム(式量167.0)3.34gを溶かしてB液とした。
 次に、A液を自動かき混ぜ機で攪拌しながらB液を加え、溶液の酸化還元電位をウチダ酸化還元電位計142ー1250ORPによって3.34秒毎に測定した。攪拌は続けたままである。反応開始時点での硫酸、スルファニル酸、臭素酸カリウム濃度はそれぞれ1.50M、0.020M、0.10Mである。
 
[実験結果]
 
 溶液の酸化還元電位の経時変化は図のとおりであった。
 反応開始後10.02秒間、酸化還元電位は707mVから702mVまで下降した後、10.02秒後から上昇(平均上昇速度を7.036mV/s)に転じ、56.78秒後に808mVになった。その後平均上昇速度を2.196mV/sに下げ96.86秒後に896mVに到達した。続いて平均上昇速度を1.210mV/sに下げ180.36秒後に997mVに到達したが、この間明確な電位振動が認めらた。しかし振動周期が3.34秒よりも短いため正確な振動波形を得られなかった。
 
《実験12》
スルファニル酸−臭素酸カリウム−硫酸系(その2)
 
[実験条件]
 
反応基質     スルファニル酸
酸化剤      臭素酸カリウム
媒質        硫酸
反応の温度   31.3゜C
 
[実験手順]
 
 純水90.0mlに濃硫酸10.0mlを溶かした溶液に、スルファニル酸0.69gを溶かしてA液とした。また、純水98.8mlに濃硫酸1.2mlを溶かした溶液に、臭素酸カリウム(式量167.0)3.34gを溶かしてB液とした。
 次に、A液を自動かき混ぜ機で攪拌しながらB液をを加え、溶液の酸化還元電位をウチダ酸化還元電位計142ー1250ORPによって3.34秒毎に測定した。攪拌は続けたままである。反応開始時点での硫酸、スルファニル酸、臭素酸カリウム濃度はそれぞれ1.00M、0.020M、0.10Mである。
[実験結果]
 
 溶液の酸化還元電位の経時変化は図のとおりであった。
 反応開始後66.8秒間、酸化還元電位は703mVから657mVまで下降した後、93.52秒後から平均上昇速度1.079mV/sの上昇に転じ、220.44秒後に759mVになった。その後平均上昇速度を0.353mV/sに落とし444.22秒後に874mVに到達した。
 444.22秒後からは504.34秒後までの間、電位振動が出現した。振動回数3回、平均振幅は21.5mV(最大振幅26.5mV、最小振幅14.5mV)、平均周期は21.71秒(最大周期26.72秒、最小周期16.70秒)であった。また、平均上昇幅は38.0mV(最大上昇幅49mV、最小上昇幅23mV)、平均下降幅は5.0mV(最大下降幅6mV、最小下降幅4mV)であった。
 504.34秒後からは明確な振動状態は出現せず、徐々に上昇速度を下げながら酸化還元電位は上昇し、641.28秒後には1044mVに達した。
 
《実験13》
スルファニル酸−臭素酸カリウム−硫酸系(その3)
 
[実験条件]
 
反応基質     スルファニル酸
酸化剤      臭素酸カリウム
媒質       硫酸
反応の温度   30.1゜C
 
[実験手順]
 
 純水90.0mlに濃硫酸10.0mlを溶かした溶液に、スルファニル酸0.69gを溶かしてA液とした。また、 純水98.8mlに濃硫酸1.2mlを溶かした溶液に、臭素酸カリウム(式量167.0)3.34gを溶かしてB液とした。
 次に、A液を自動かき混ぜ機で攪拌しながらB液を加え、溶液の酸化還元電位をウチダ酸化還元電位計142ー1250ORPによって3.34秒毎に測定した。攪拌は続けたままである。反応開始時点での硫酸、スルファニル酸、臭素酸カリウム濃度はそれぞれ1.00M、0.020M、0.10Mである。
 
[実験結果]
 
 溶液の酸化還元電位の経時変化は図のとおりであった。
 反応開始後150.1秒間、酸化還元電位は701mVから632mVまで下降した後、210.42秒後から上昇に転じ、323.98秒後に652mVになった。その後平均上昇速度を7.16mV/sに速め404.14秒後に796mVに到達した。続いて平均上昇速度を0.336mV/sに下げ594.52秒後に860mVに到達した。
 594.52秒後からは751.5秒後までの間、電位振動が出現した。振動回数4回、平均振幅は37.4mV(最大振幅44mV、最小振幅30mV)、平均周期は43.42秒(最大周期53.44秒、最小周期30.06秒)であった。また、平均上昇幅は53.0mV(最大上昇幅63mV、最小上昇幅36mV)、平均下降幅は21.8mV(最大下降幅34mV、最小下降幅4mV)であった。
 751.5秒後からは明確な振動状態は出現せず、0.0777mV/sの割合で酸化還元電位は上昇し、1098.86秒後には1012mVに達した。
 
《 実験結果一覧 》 ここにジャンプ
 
DISCUSSION 》
 
[参考文献]
E.koros and M.Orban、Nature、273、371(1978)
原田新一郎、化学と教育、45(10),594(1997)
アンドレ・ケレス、現代化学、No.329,56(1998)