ゲル中における結晶成長
 
動機
 
 顧問の先生に、結晶を育てるときゲルを用いるとよい結晶gが得られるということを聞き、それに関する本を見るととてもきれいな写真が載っていた。自分も作ってみたいと思った。
 
原理
 
 ゲルに酸を含ませておき、その上に金属水溶液を乗せると酸と金属が反応して結晶をつくる。このときゲル中では金属水溶液の拡散が遅いので結晶の成長がゆっくり進む。
 
実験
 
 メタケイ酸ナトリウム(水ガラス)に酸を加えるとゲル化する現象を利用する。純水100mLに水ガラス25gを溶かし、これを原液とする。これに酒石酸を加えると原液をゲル化させるとともに、あとで加える金属溶液と反応して結晶をつくる。
 
@ビーカー中で酒石酸溶液にゲルの原液をピペットで一滴ずつ滴下する。多量に入れるとすぐゲル化してしまう。滴下後、試験管に移して1日放置する。
Aゲル化した後、塩化カルシウム、硝酸鉄(V)、硫酸コバルト、硝酸ストロンチウム、硝酸銅、硝酸亜鉛の水溶液をゲル上に置いて放置する。
 
結果と考察
 
塩化カルシウムの場合
 
結果
 境界面上とゲル中に、かすかに黄色みをおびた結晶が析出した。上方より下方の方が透明度や結晶の完全性がよい。上方のものでも、しばらくすると透明な切れ目の鋭い角がついてきた。
考察
 結晶は酒石酸カルシウムであろう。上方では拡散してくる塩化カルシウムの量が多く結晶成長が早いために、下方でよい形の結晶ができたと思われる。鋭い角があとから出来てきた理由は、ある程度成長した結晶は成長速度が遅くなるためではないだろうか。
 
硝酸鉄(V)の場合
 
結果
 境界面1.5cm位まで紫色の沈殿が生成した。数日後、二つの円盤状の膜のようなものが現れ試験管の直径いっぱいに広がり、つぎに上下に成長し、沈殿の中にまで進出していった。その後、膜はゲル中に色の境界をつくった。ゲルと水溶液との境界面まで成長してきた膜を、手で暖めたり針で突いたりしたところ、泡が出来て上昇した。火で加熱すると膜がたくさん出来てきた。
考察
 膜は酒石酸鉄(V)だと思われるが、結晶にはならなかった。原因は分からない。
 
硫酸コバルトの場合
 
結果
 境界面に少し隙間をあけて赤紫色のボコボコ固まった沈殿が出来た。その下には試験管壁にこびりつく様に濃い赤紫色の球形の結晶が出来た。
考察
 沈殿と結晶が出来たが、どちらも酒石酸コバルトなのかどうか分からない。
 
硝酸銅の場合
 
結果
 境界面から2,3cm位の間に青色の結晶が出来た。上方の結晶ほど色が白味をおびている。1,2cmあたりから大きくて長方形の結晶が現れた。大きさは大きいもので1mm程度であった。
考察
 2種類の結晶が出来た理由は分からない。拡散が関係しているのだろうか。
 
硝酸ストロンチウムの場合
 
結果
 境界面から下に1cm間隔で白色沈殿が出来た。しばらくすると境界面より上に黄色い結晶が析出した。このころになると、白色沈殿は周期的沈殿を形成した。厚みは変わらなかった。数日後、一部分から沈殿が消え始めやがて全部消えてしまった。そのころ、わずかに黄色をおびた結晶が現れてきた。
考察
 境界面より上に黄色い結晶が析出した理由は、酒石酸が水溶液中に拡散したためではないだろうか。また、沈殿が離れたところに生成した理由はその部分でイオン濃度が高くなったためだと思われる。
 
硝酸鉛の場合
 
結果
 境界面の下方5cm位のところに大きさが1mm程度の黄色球形結晶が析出した。
考察
 5cmより下には結晶が現れなかった理由は、拡散がそこで止まってしまったためであると思う。