コップの中の火炎振動
実験者 A.N.

【はじめに】
 洋ロウソク1本の火炎では周期的な振動は観察されないが、
複数の洋ロウソクを火炎が重ならない程度に接近させると、
同位相同期振動が出現することが見出されている[7]。
また、火炎が重なるように束ねた複数の洋ロウソク、あるいは
1本の和ロウソクでは、周期的な火炎振動が出現することも
見出されている[3][6]。これらの火炎では逆位相同期現象も
出現することが報告されている[3][4][6]。一方、火炎1本で
振動する例としては、和ロウソク以外にアルコールランプ火炎と
ガスバーナー火炎が知られている[2][3]。最近、火炎周囲に
空間的な制限を施すことで、洋ロウソク1本の火炎でも振動が
起きることが報告された[1]。その報告では、コップの中に入れ
た洋ロウソク1本の火炎振動が述べられている。

【方針】 

 コップの中の洋ロウソク1本に火炎振動が出現するかどうかを
確認する。

【実験】

<準備>
・カメヤマロウソクダルマ
・50mLビーカー(直径5.0p 高さ6.1p)
・マッチ
・部屋の窓を閉める

<手順>
@洋ロウソク1本にマッチで火をつけて50mLビーカーの中心に
まっすぐ立てる。
A火炎振動が始まるまで動かずに観察する。
B同様の実験を繰り返す。

<結果>
(1)ロウソク上端がビーカーの縁より上方にあるときは、火炎振動は
出現しなかった。
(2)ロウソク上端がビーカーの縁より下方にあるときに、火炎振動が
出現した。
(3)ロウソク上端がビーカーの奥深くまで下がってしまうと、火炎が
大きく揺れて定常的あるいは周期的な現象は観察できなかった。
(3)ロウソク上端の位置によって、火炎の大きさに差があった。
(4)振動数は10.0Hzであった。


         1/30秒毎のスナップショット

<考察>

1.コップ火炎振動の原因として、次のふたつが考えられる。
(1)ひとつの原因は酸素不足である。ロウソク上端がコップの中に
入ってしまうと、火炎への空気の流れが減少する。燃料蒸気量に
対して酸素が不足するため、火炎は大きくなる。次に、上昇気流に
よって火炎がちぎれ火炎が小さくなる。火炎は酸素不足のため再び
大きくなる。そしてちぎれる。これが繰り返されて火炎振動となる。
(2)もうひとつの原因は、コップ上方の気流に発生する気流振動で
ある。コップが無いときは、火炎周辺の気流が層流のため火炎振動は
起きない。コップがあると、火炎側方や火炎上方から割り込んでくる
気流が発生する。これと上昇気流との相互作用で気流が不安定となり、
気流の振動が起きて火炎振動を誘発する。

【今後】
1.実験条件(コップサイズ、ロウソクサイズなど)と火炎振動の関係を
調べる。
2.コップ内にロウソク火炎が入った後、火炎振動と火炎の位置がどう
関係するかを調べる。
3.シャドウグラフ法によって火炎周辺の気流を調べる。

【文献】
[1]鷹取慧、吉川研一、“日本物理学会第71回年次大会概要集”p.2931、
  日本物理学会(2016)
[2]永島涼、“平成26年度埼玉県理科教育研究発表会要旨集”、
  埼玉県高等学校理化研究会(2015)
[3]高橋哲、二瓶巧、西堀亮太、“第50回日本学生科学賞作品集”、
  読売新聞社(2008)
[4]H.Kitahata et al, J.Phys.Chem A, 113, 8164(2009)
[5]蔵本由起、“同期する世界”、集英社(2014)pp.44-51
[6]田口淳史、長篤志、三池秀敏、“非線形振動子としてのロウソクの炎の挙動U”、
日本化学会第16回非線形反応と協同現象シンポジウム一般講演(2007)
[7]石田隆宏、原田新一郎、化学と教育、47(10)、716(1999)
[8]長山雅晴、数学セミナー、51(8)、14-19(2012)

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