カラムBZ反応
 
BZ反応とは
正式名:ベロウソフ・ジャボチンスキー反応。
 金属イオンを触媒として、マロン酸やリンゴ酸などの有機物を臭素酸で酸化する反応で、触媒である金属イオンの酸化状態が一定周期で時間的に変動反応を繰り返す。
 例えば、金属イオンとしてフェロイン(オルトフェナントロリン鉄錯体)を用い、マロン酸を臭素酸ナトリウムで酸化すると次のような全体反応が進行する。
マロン酸+臭素酸→臭化マロン酸+二酸化炭素
 この進行の過程で臭化物イオン濃度が時間的に周期変動するとともに、フェロイン・フェリイン間の時間的周期変動が現れる。そのため溶液の色が赤と青の間を時間的に周期変動する(時間振動)。またBZ反応溶液をシャーレ中にうすく広げるように入れて静置すると、赤色溶液中に淡青色の同心円状または螺旋状の縞模様が出現し、時間とともに縞模様が生成進行する(空間振動)。
 今回の実験では、空間振動の方を主に用いる。
● カラムとは
細い管のことを一般的にカラムという。
(この実験では内径3ミリのガラス管をカラムと呼ぶことにする。)
◎ 目的
 「反応を繰り返す」または「自発的に模様が発生する」といった今までの授業の実験では見られなかった反応があることに大変な興味を持ち、文献を参考にこのような化学実験の追試を数多く行なっていった。様々な文献を読みあさるうちに、シャーレのような平坦な容器以外で空間振動を起こすことができると知り、いろいろと条件を変えて追実験を行ってみることにした。  
◎ 試薬の調整
 純粋100mlに下記の試薬を溶かし、A〜Eの溶液を調整する。
溶 液 試 薬
臭素酸ナトリウム12.5g
臭化ナトリウム2.5g
マロン酸2.5g
C’ リンゴ酸3.2g
C” CとC’を体積比[10:0]〜[0:10]の割合で混合する
硫酸17ml
1,10-フェナントロリン1.35g、硫酸鉄(U)0.7g
◎ 実験方法
@シャーレにA溶液2ml、B溶液1ml、C溶液2ml、D溶液1mlを入れる。
A黄色(臭素)が抜けるまでシャーレを軽く揺する。
BE溶液1mlを入れ、液を揺すって混ぜる。
Cできた溶液を安全ピペッターを用いてカラムの中へ吸入し静置する。
Dカラムの状態は、縦置き、横置き、斜め置きにする。
◎ 実験結果
《T》縦置きおよび横置きの場合 
 
@溶液の一カ所(ときには複数箇所)にリング状の縞模様が発生し、この縞が左右に伝播していった。しばらくすると、初めの縞が発生した部分に再びリング状の縞が現れ伝播していった。この現象が繰り返された。
A逆向きに伝播していった縞が衝突すると縞模様が消滅した。
B逆向きに進行してきたリング状の縞模様が近づくと伝播速度が減少した。
C直径0.6mmのカラムで発生した縞模様が5.92mm/分の速度で伝播し、直径3mmのカラムに進行したとき、速度はほぼ同じ速度5.67mm/分を保って伝播を続けた。一方、直径3mmのカラムで発生した縞模様の伝搬速度は11.0mm/分であった。
 
 
《斜めに傾けてカラムを置いた場合》
 
 カラムの内面にはりつくようなターゲットパターンの縞模様が発生し伝播していった。下方への進行波はすぐリング状に変わったが、上方への進行波はカラムの軸方向に伸びるとともに形がくずれていった。
 
●●考察●●
 
溶液を小さいセルの集まりと考え、各セルが内部で起きる化学反応と外部からの物質拡散によって、興奮・不応・休止という3状態を順々に経巡ることで縞模様の発生と伝播を説明できる。
しかし、カラムBZ反応ではカラムのサイズや置き方によって縞模様の特徴や伝播の仕方に違いが生じることを今回の実験によって観察した。シャーレ中に薄く広げた溶液に発生する従来の空間振動にはない機構が存在する可能性があり、今後の検討課題である。