§1. はじめに
(1)吸着とは
ある成分の濃度が界面付近と相内部とで異なっているとき、その成分の吸着が起こっているという。
(2)吸着の例
*赤インクで着色した水にあらかじめ赤熱し冷却した木炭を入れると、インクの色素が木炭に吸着され水の赤色がうすくなる。
*シリカゲルに水蒸気が吸着され周囲の空気を乾燥させる。
(3)吸着等温式
*フロインドリッヒFreundlichは温度差があまり大きくない範囲で次式が成立することを経験的に見いだした。
w/m=ac1/n
w:吸着した溶質の物質量
m:吸着剤の質量
c:吸着平衡にある溶液の濃度
a,n:定数
*ラングミュアLangmuirは単分子層の吸着が起こっている場合には次式が成立することを導いた。
c/y=b/ym+c/ym
y:吸着した溶質の物質量
c:吸着平衡にある溶液の濃度
ym:単分子層をつくるのに必要な溶質量
b:定数
[理論] しばらくお待ちください。
§2.実験
(1)目的
酢酸及びシュウ酸の活性炭への吸着で、フロインドリッヒおよびラングミュアの式が成立しているかどうかを調べ、式中の定数を調べ、吸着の様子を考察する。
(2)原理
薄い酢酸が固体と接するとき、その界面に溶質である酢酸分子が吸着される。活性炭はその質量に比べて表面積が非常に大きく吸着力も大である。そこで活性炭に吸着される酢酸分子の量を、吸着平衡のある酢酸の滴定によって求める。
(3)手順
@0.2mol/L酢酸溶液及び0.1mol/L水酸化ナトリウム溶液をそれぞれ200mLつくる。
A0.05mol/Lシュウ酸溶液をつくり、これで0.1mol/L水酸化ナトリウム溶液を滴定する。これが標準溶液になる。
B0.2mol/L酢酸溶液をもとにして、0.2,0.1,0.05,0.025,0.0125mol/Lの酢酸溶液を50mLずつつくり三角フラスコに入れる。
C各三角フラスコに活性炭を入れ、十分振とうし栓をして長時間放置(25℃)する。
D放置後の上澄み液を10mLとり、標準水酸化ナトリウム溶液で滴定する。
§3.結果
酢酸の吸着は活性炭0.5g,1.0g,2.0gについて行い、表1のような結果を得た。
シュウ酸の吸着は活性炭1.0gについて行い、表2のような結果を得た。
吸着平衡にある溶液は25℃に保った。
表1. 酢酸の吸着
活性炭m[g] | 酢酸初期濃度C0[mol/L] | 平衡酢酸濃度C[mol/L] | 吸着酢酸モル数w[mol] | w/m | log(w/m) | logC |
0.5 | 0.1728 | 0.1548 | 0.000901 | 0.001802 | -2.744245213 | -0.810229044 |
0.5 | 0.0864 | 0.0726 | 0.000694 | 0.001388 | -2.857610534 | -1.139063379 |
0.5 | 0.0432 | 0.0325 | 0.000538 | 0.001076 | -2.968187729 | -1.488116639 |
0.5 | 0.0216 | 0.0136 | 0.000401 | 0.000802 | -3.095825632 | -1.866461092 |
0.5 | 0.018 | 0.0047 | 0.000304 | 0.000608 | -3.216096421 | -2.327902142 |
1 | 0.231 | 0.1955 | 0.001778 | 0.001778 | -2.750068243 | -0.708853238 |
1 | 0.1155 | 0.0874 | 0.001401 | 0.001401 | -2.853561865 | -1.058488567 |
1 | 0.0578 | 0.0374 | 0.001018 | 0.001018 | -2.992252222 | -1.427128398 |
1 | 0.0289 | 0.0136 | 0.000765 | 0.000765 | -3.116338565 | -1.866461092 |
1 | 0.0144 | 0.0039 | 0.00052 | 0.00052 | -3.283996656 | -2.408935393 |
2 | 0.2143 | 0.1486 | 0.003286 | 0.001643 | -2.784362437 | -0.827981191 |
2 | 0.1072 | 0.0583 | 0.002442 | 0.001221 | -2.913284336 | -1.234331445 |
2 | 0.0536 | 0.0192 | 0.001721 | 0.0008605 | -3.065249125 | -1.716698771 |
2 | 0.0268 | 0.0055 | 0.00106 | 0.00053 | -3.27572413 | -2.259637311 |
2 | 0.0134 | 0.0053 | 0.004 | 0.002 | -3.698970004 | -2.27572413 |
表2. シュウ酸の吸着
活性炭m[g] | シュウ酸初期濃度C0[mol/L] | 平衡シュウ酸濃度C[mol/L] | 吸着シュウ酸モル数w[mol] | w/m | log(w/m) | logC |
1 | 0.0555 | 0.0314 | 0.002405 | 0.002405 | -2.618884919 | -1.503070352 |
1 | 0.0277 | 0.0114 | 0.00163 | 0.00163 | -2.787812396 | -1.943095149 |
1 | 0.0138 | 0.0041 | 0.000976 | 0.000976 | -3.010550182 | -2.387216143 |
1 | 0.0069 | 0.0007 | 0.000654 | 0.000654 | -3.184422252 | -3.15490196 |
1 | 0.0035 | 0.00005 | 0.000337 | 0.000337 | -3.472370099 | -4.301029996 |
§4.考察
グラフより定数a,n,b,ymを求めると次のようになった。
Freundlich | |||||
活性炭 | a | n | b | ym | |
酢酸 | 0.5 | 0.0013 | 2.57 | 0.0378 | 0.0011 |
1.0 | 0.0030 | 3.14 | 0.00295 | 0.0020 | |
2.0 | 0.0030 | 3.14 | 0.00294 | 0.0012 | |
シュウ酸 | 1.0 | 0.003 | 3.15 |
結果をグラフの描くと図1,2,3のようになった。
図1
図2 しばらくお待ちください
図3 しばらくお待ちください
図1においてグラフは直線になり、3本ともほぼ一致した。このことからフロインドリッヒの式は成り立つと考えられる。
図2では酢酸とシュウ酸のグラフはほぼ平行である。このことから同じような吸着の仕方をしていると考えられる。
図3では各点は直線上にのらず分散していることから、ラングミュアの式は成り立っていない。従って、酢酸分子は何層にも重なって吸着していると思われる。
[ おまけ ]
「Langmuir単分子膜のパターン形成」の写真が
広島大学のホームページに載っていますね。
http://www.mls.sci.hiroshima-u.ac.jp/amc/index.html
このパターン形成に詳しい方はいらっしゃいませんか。
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