リーゼガング現象−ゲル中の周期的沈殿ー
 
>目的<  
 
 ゲル中で周期的沈殿をつくり、なぜ周期的に沈殿するかを調べる。
 
>原理<  
 
 ゲル中に内部電解質を溶かし、あとから外部電解質を加えると、外部電解質が下部へ徐々に拡散していきながら縞状に沈殿を生じる。(これをリーゼガング現象という。)そこで縞と縞の間の相を切り取って、キレート滴定により外部電解質の金属イオンの量を調べる。
 
実験1 
 
 炭酸カルシウムの沈殿をつくる。
 1%寒天溶液を50mlつくり、1N炭酸ナトリウム溶液4mlを混合し、ガラス管に入れ放置し寒天が凝固した後、5%塩化カルシウムを2ml加えて栓をして放置する。そして沈殿が出来たら寒天ゲルをガラス管から抜き出して、縞と縞の間の層を全部切り取り、それぞれ純水に溶かし、その中のカルシウムイオンを0.01M・EDTAでキレート滴定をする。
 
実験2 
 
 オキシン銅(U)錯体の沈殿をつくる。
 オキシン酢酸溶液(8-ヒドロキシキノリン1gを10%酢酸100mLに溶かしたもの)50mLに純水50mLを加え、その中に棒状寒天の内部の軟らかいところを1g溶かして膨潤させる。その後、ウォーターバス上で加熱溶解し、これをガラス管に入れて放置し、寒天が凝固したら、10%硫酸銀水溶液を加え栓をして放置する。そして、沈殿が出来たら寒天ゲルをガラス管から抜き出して、縞と縞の間の層を一定量切り取り、それぞれを純水に溶かしその中の銅イオンを0.01M・EDTAでキレート滴定する。
 
実験3
 
 1%寒天溶液100mLと10%塩化マグネシウム溶液100mLをビーカーに入れて混合する。
 この混合溶液を試験管3本に入れて栓をして放冷する。溶液が凝固したら濃アンモニア水をゲル上部に滴下する。このとき試験管最上部ギリギリのところまで入れる。あとで栓をして試験管を逆さにするとき空気が入らないようにするためである。
 3本を1本ずつ正立、倒立、水平置きにする。
 以上のものを数日静置し、沈殿のでき方を見る。
 
実験4
 
 ガラス管下半分に水酸化マグネシウムを含むゲルを入れ、上半分には水酸化マグネシウムを含まないゲルを入れる。
 ガラス管を直立させて数日置いたのち、上半分のゲルだけを下半分から切り離し、8等分に輪切りにする。
 各部分を純水に溶かし、含まれるマグネシウムイオンの量をキレート滴定で測定する。
 
実験5
 
 ガラス管に水酸化マグネシウムを含むゲルを入れ、ガラス管を直立させて数日置いたのち、ゲルを取り出し8等分に輪切りにする。
 各部分を純水に溶かし、含まれるマグネシウムイオンの量をキレート滴定で測定する。
 
>結果<
 
実験1について
 白い縞の沈殿が形成された。上部の縞の間隔が非常に狭く、下部へ行くほど縞の間隔は広くなっている。その縞をよく見ると粒状の結晶が多数集まって縞を成している。
 
実験2について
 黄緑色の縞の沈殿が形成された。上部の縞の間隔が非常に狭く、下部へ行くほど縞の間隔は広くなっている。その縞をよく見ると粒状の結晶が多数集まって縞を成している。
 
 その他の結果とグラフはしばらくお待ち下さい。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
>考察<
 
 ゲル中であるため、外部電解質の拡散速度が非常にゆっくりである。まず、境界付近で外部電解質の金属イオンはゲル中に溶け込んでいる内部電解質の陰イオンを引き寄せて沈殿を生じる。そして、外部電解質の金属イオンはそのまま下部へ拡散していくが、先程の沈殿で内部電解質の陰イオンが上部へ移動してしまったため、その間は沈殿を生じない。このようなことが繰り返されて周期的沈殿が形成されると考えられる。
 また実験2の結果から、下部へ行くほど外部電解質の金属イオンの濃度が小さくなっているが、このことと縞の間隔が下部へ行くほど広くなっていることが関係していると思われる。