Antibubble
アンチバブル
水中シャボン玉
*はじめに
Antibubbleに関する論文で、私たちが知っている最も古いものはnature論文(Hughes1932)である。この論文ではAntibubbleという用語は使われておらず、dropという単語で表現されている。
現在ではAntibubbleという用語以外にアンチバブル、水中シャボン玉、反泡、裏返しのシャボン玉といった用語が使われている。
Antibubbleは液体バルク中に形成される液滴である。
この液滴は周囲を1μm程度の空気薄膜で被われているため、バルクと合体せずに存在できる。
すなわち、液滴が空中に浮いているのである。
*形成
Antibubbleはいろいろな液体でつくれる。私たちの実験では、水、シリコンオイル、キャノーラオイル、エチレングリコール、希薄洗剤水溶液、界面活性剤の希薄水溶液、牛乳でAntibubbleの形成が確認できた。
Antibubbleをつくるひとつの方法は、空気中からバルク表面に液滴を落下させることである。このとき、空気分子が液滴表面に付着したままバルク中に没することでAntibubbleが形成される。
*安定性と崩壊
シャボン玉と同様に、Antibubbleは安定な状態ではない。比較的短時間(数秒〜数分)で空気薄膜が破れて崩壊する。
純水ではAntibubbleはできにくいが、少量の界面活性剤を溶かすとできやすくなり寿命が延びる。液滴の表面に界面活性剤分子が整列するので空気分子が付着しやすくなるとともに、空気薄膜を構成する二重の気液界面に界面活性剤分子が整列するためである。整列する分子数を見積もってみたところ、1.43×10^15個となった。界面活性剤分子は疎水基を空気側に突き出して並び、ファンデルワールス力によって空気分子を引きつける。このため気液界面の境界層は厚みを増し、空気の流れが妨げられる。
Antibubbleが崩壊する外的要因としてはゴミ、温度の不均一、機械的衝撃、宇宙線など、内的要因としては空気移動、分子の熱運動、薄膜の膜厚ゆらぎ、界面振動などが考えられる。このうち最も主要な要因は空気移動である。
(注)空気移動の原因は重力であるから、これは外的要因に含めることもできる。
*寿命
空気薄膜中の空気圧は、鉛直下方で大きく上方で小さい。従って、空気は下部から上部へ移動する。すると液滴は下方へ下がってくる。そして、薄膜下部の厚さがある程度小さくなる(ファンデルワールス力の有効距離以下)と、液滴とバルクが合体してAntibubbleは崩壊する。このとき薄膜中の空気はAntibubbleの上部へ収束して泡となる。
空気の移動速度の大小によってAntibubbleの寿命が決まる。空気の移動をポアズイユ流れで近似し、私たちが実験で得た膜厚1.2μm(Kato2011)をもとに計算を行うと流速は6.2×10^−2mm/s、寿命は3900秒となった。この寿命は通常の実験値に比べて長いが、ベルギーのグループが得た値3600秒や報告されている最長実験値に近い。
*膜厚の測定
私たちは捕集法と上昇法を用いて膜厚測定を行ったところ、それぞれ5.4μmと1.2μmという結果が得られた[Niida2005,Kato2011]。
捕集法による結果がコヒーレント長さの5倍になった原因は、空気捕集および体積計測の際の誤差と思われる。
*膜厚と半径の関係
私たちは上昇法を用いて、大きさの異なるAntibubbleについて空気薄膜の膜厚を調べる実験を行い、大きいAntibubbleほど膜厚が小さいという結果を得た。実験結果から膜厚εと半径rには、近似的に反比例の関係が考えられる[Kato2011]。