Antibubble アンチバブル 中級編[2020/3/4更新]
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1.つり合いの式
アンチバブルでは水玉を空気薄膜が被っています。
従って、直径1cmくらいの水玉が空中に浮いていることになります。
つまり、重力と空気による浮力がつり合っているはずです。
浮力を計算してみましょう。
空気による浮力が重力に等しくなりました。
2.空気薄膜の厚さ(膜厚)はどのくらいですか。
1μmくらいです。
アンチバブルAntibubbleの表面に干渉色が見えるので、
光の波長くらいの薄膜があると予想できます。
3.膜厚は測定できますか。
私たちは次の三つの方法で測定しました。。
(1)気体捕集法 (2)上昇速度法 (3)脱気法
(1)気体捕集法
アンチバブルが壊れると小さな泡ができます。
この泡は空気薄膜の空気です。
この泡を集めてその体積を測れば膜厚が計算できます。
アンチバブルを100個壊して空気を集めると体積は285mm3でした。
この値から膜厚を計算すると、5.2μmでした。
この膜厚は可視光線のコヒーレンス長の上限ぎりぎりです。
測定誤差が大きかったようです。
(2)上昇速度法
アンチバブルは水中を上昇します。等速直線運動をする区間があります。
この区間における力のつり合いから膜厚を計算します。
計算結果は膜厚1.2μmでした。よい値でした。
(3)脱気法
脱気した水で希薄洗剤水溶液をつくり、アンチバブルの寿命を測る方法です。
測定結果は1.1μmでした。
詳しくは上級編をご覧ください。
4.アンチバブルはふたつに分割できます。
アンチバブルをふたつに分割する瞬間
5.アンチバブルは引き延ばすことができます。
6.液滴が水中に沈まないで水面に浮いてしまうことがあります。
水面上に突き出ているのではなく、沈んでいます。
これをアンチドーム(Antidome)といいます。
アンチドームはすぐ壊れます。水と水の間に挟まった空気が逃げるからです。
長持ちさせる方法があります。
6.水だけ(洗剤を添加しない)でアンチバブルはできますか。
できます。しかし、すぐ壊れます。
洗剤を添加すると壊れにくくなるのです。
7.水以外の液体でもアンチバブルやアンチドームをつくれますか。
つくれます。コーヒー、牛乳、サラダ油などでもつくれます。
エチレングリコールとシリコンオイルでアンチバブルとアンチドームをつくってみました。
次の写真はその結果です。
エチレングリコール
シリコンオイル
なお、早稲田大学のグループはレシチンでアンチバブルをつくる研究をしています。
文献
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